作品一覧


編み物×立体造形

赤べこ
赤べこ

編み物と言えば、マフラーやセーターなどの衣類を編む様子を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、編み方によっては複雑な立体や他素材との融合が可能な、幅広い創作ができる手芸です。
特にかぎ針編みは、硬い編み地を生み出せることから、ぬいぐるみのように中綿を詰めて人形を作る『あみぐるみ』と呼ばれる分野が存在します。最近では、綿だけでなく針金などを内部に通すことで、自由なポージングを楽しめるあみぐるみを制作する作家さんも登場しています。


僕の作品の見どころは、メカや筋肉などの編み物らしからぬディテール造形や、可動フィギュアのような関節表現、赤べこの揺れる首のようなギミックを備えた「従来の編み物の常識に囚われない造形」を追求している所です。
編み図無しで生み出される自由な編み物作品の無限の可能性を、ぜひご覧ください。

最新の作品はInstagramでご覧いただけます。
https://www.instagram.com/atelier_euph.2


エッセイ『ありふれた家を建てる』表紙用作品
著者:椹野道流
出版:株式会社U-NEXT オリジナル書籍
2025年制作

使用材料:毛糸・綿・鉢底ネット・アルミワイヤー

小説家・椹野道流さんの著書の表紙掲載用として制作した作品。
著書のタイトル通りに何の変哲もない、ありふれた見た目の家…しかし、どこか怪しげで、ひとりでに動き出しそうな雰囲気に仕上げました。
扉は開閉式で、床下を開いて小さなライトを入れると、家に灯りがともっている様子を玄関から覗くことができます。
著者様および読者様からもご好評を頂き、可笑しくて愛おしい家建てエッセイにふさわしい作品であると自負しております。

〜制作上のこだわり〜
「ありふれた家」というタイトル通りの普通の一軒家でありながら、不敵な雰囲気を出してほしいとのご要望に悩みつつ、持てる表現力を最大限発揮して制作しました。
小説家の家にちなんで屋根は開いて伏せた本の形、窓と扉はシミュラクラ現象を用いて人の顔の様に見える配置にしました。
家という角ばったオブジェクトを表現するために、編み地の裏側のほとんどに鉢底ネットを用いています。
また、床下の開閉扉は、玄関から覗いた際に不自然な溝ができないよう、室内と同色の編み地を扉の裏に縫い付けて、閉めた時に廊下とシームレスに繋がるようにするなど、どのように撮影が行われても隙がない造りになるよう工夫しました。
無機質なのに有機的、建造物という本来は硬質な存在なのにどこか柔らかい雰囲気…そんな編み物ならではの表現が非常に活きた作品となりました。


「T-REX全身骨格」 2025年制作
使用材料:毛糸・綿・鉢底ネット・アルミワイヤー

恐竜の代表格であるティラノサウルスの骨格を全て手編みで表現した作品。
過去最高のパーツ数に、何度も挫折しかけながら制作しました。
隅々まで仕込まれたワイヤーにより、骨格標本でありながら躍動感溢れるポージングが可能に。
実在の標本とは形や大きさが異なる部分もありますが、全体のバランスや格好良さを重視した迫力あるデザインに仕上げました。

〜制作上のこだわり〜
骨格を編む上でこだわったのは、尖りと陰影の表現です。
編み物という手芸は、普通に編むだけでは尖りを表現しにくい技術です。
牙や爪、肋骨など、とにかく尖った部分の多い骨格モチーフでしたが、独自の技術でなるべく鋭くなるように編みました。
また、関節や骨の内側になる部分を濃色で編むことで、単色では出せない重厚感や立体感を演出しています。


「ビームの撃てそうな手袋」 2021年制作
使用材料:毛糸・綿

ロボットアニメなどで登場する"指先からビームや弾丸が撃てるマニピュレータ"を、手袋として装着できるようにした作品。
メカの装甲のようなパーツを、先に編んだ手袋素体に縫い付けることで、立体感のあるリアルなメカハンドに仕上がりました。
子供の頃に、裏返して指先の窪んだ軍手を装着して遊んでいたことを思い出したのが制作のきっかけです。

〜制作上のこだわり〜
手袋素体は畝編みでジャバラ状にして、メカ内部の可動域を保護するカバーを表現しました。
反対に、外装にあたる部分はカッチリとした滑らかな細編みにすることで、硬い印象になるよう工夫しました。
糸始末を素体と外装の間で行うなど、見た目や装着感が悪くならないように気をつけています。
毛糸と綿だけのシンプルな構成にも関わらず、ロボット然としたギャップのある外見が特徴です。


「DJ AKABECO」 2024年制作
使用材料:毛糸・綿・アルミワイヤー・金具

話題となった「ヘッドホンを着用した赤べこ」をヒントに制作。
意図せず派手になってしまったヘッドホンが、フロアを沸かすDJのアイテムに見えたので命名。
ゆらゆらと首を揺らす様子は、まるでビートを刻みディスクをスクラッチしているようです。
民芸品として愛される赤べこを、伝統の様式を活かしつつバイブス上がるデザインに仕上げました。

〜制作上のこだわり〜
この作品のポイントは「重り」と「二重構造」。
首の後方には重りとして針金が巻きつけてあり、吊ることでバランスを取ってゆらゆらと揺れる構造にしました。
また、胴体は二重の編み地となっており、頭部を吊り上げても空洞を保てる強度を実現しています。
伝統的なデザインを表現しつつ、ギミックも再現できるよう試行錯誤と微調整を繰り返して生まれた作品です。


「可動式鏡餅」 2025年制作
使用材料:毛糸・綿・アルミワイヤー・鉢底ネット

鏡餅を毎年買わなくて済むようにと制作した作品。
鏡餅本体には針金と引き出し関節を仕込み、毎年違うポージングで飾れます。
御幣を足に見立てて、まるでキャラクターのように表情豊かな可動式の鏡餅に仕上げました。
もちろん三方(台座)も全て手編みです。

〜制作上のこだわり〜
本格的に鉢底ネットを用いた作品。
編み地と編み地の間に鉢底ネットを挟み込むことで、強度のある平らな面で構成された立体を作れるようになりました。
これにより、内部が空洞の立体構造(今作で言えば三方の部分)も容易に表現することが可能です。
餅や橙の接続部分に引き出し関節のような編み方を採用し、柔軟に動かせるようデザインした鏡餅にも注目です。